花のウエディング

十三年ぶりに生まれ故郷に帰ったケイトは、別れた恋人ジャックとばったりでくわした。
かつて自分の可能性を試したくてロンドンに行くことにした彼女を、ジャックは温かく送り出すかわりに冷たく別れを告げたのだ。
そして腹いせのように、すぐに別の女性と結婚した。
しかし、再会したジャックは以前よりいっそう魅力的になり、ケイトの耳元でささやいた。
「妻とはとっくに離婚したんだ」あんな仕打ちをしておいて、今さらよりを戻したいとでもいうの? ケイトは激しい反発を覚えながらも、意に反して胸が高鳴りだすのを抑えられなかった。
新人レポーターのタイラーに、大きなチャンスがめぐってきた。
ハリウッドの人気スター、ザック・プリンスに一週間密着し、独占インタビューする機会を与えられたのだ! ザックは、タイラーが少女時代から憧れてきた俳優だ。
しかし実際に会ってみると、彼は世間で言われているような、陽気で愛想のいい人物ではなかった。
現実のザックはひどく無礼で、傲慢で、非協力的。
壁にぶちあたってばかりのタイラーだが、なにより困惑させられるのは、ザックの圧倒的な男らしさだった。
その魅力に惑わされず、仕事をまっとうするにはどうしたら……。
エリザベスはふとした好奇心から豪華なパーティに忍び込んだ。
主催者は億万長者のコール・ウィリアムズ。
長身、ブロンド、端整な風貌と三拍子そろった社交界の寵児で、いまも大勢の人間が―― とくに女性たちが、彼に群がっている。
でも、エリザベスのお目当てはコールではない。
彼の所有する幻の彫刻作品《ほほえむヴィーナス》なのだ。
もっと近くで鑑賞したくなり、彫刻に歩み寄った彼女は驚愕に目を見開いた。
これは……贋作だわ! メディア業界の名士でもある彼が贋作を展示するなんて。
ふいに威圧的な気配を感じ、エリザベスは振り向いた。
そこにはコールが目に冷酷な光をたたえて立ちはだかっていた。
コンピュータ・プログラマーのカーラは、父親を事故で亡くし、悲しみに暮れていた。
ところが、葬儀の席で近づいてきた謎の男性ニックにこの死には不審な点があるとささやかれて動揺する。
さらに彼はカーラに一緒に調査をしたいと提案してきたのだ。
その矢先、二人は何者かに命を狙われる。
姿の見えない殺人者から逃れ、二人はホテルで一夜をともにすることになった。
「君を抱くつもりはない」熱い欲望を宿した瞳と続いた言葉に、カーラの胸の不安は消え、なぜか甘い期待に満たされた。
「僕が君を抱くときは……」鬼才・筒井康隆が31歳で執筆した画期的な処女長篇小説。
テレビが絶対の時代だ。
街中いたるところに設置されたカメラ、テレビ・アイを意識して、自分をカッコよく見せるため、テレビ画面にちらりとでも映るため、あらゆる人間がドラマを演じるように振舞いつづける社会。
この地球上に住む48億の人間のうち、いったい正気なのは誰か……テレビに踊らされる人間たちを描いて、マスコミを痛烈に諷刺するこの小説は、まるで21世紀日本への予言のようだ。
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